不動産業界における原材料費の高騰は、現在も深刻な課題であり、2025年以降もその影響は継続すると予測されています。この問題は多岐にわたる弊害をもたらしますが、同時に業界は様々な対策を講じています。

高騰の影響
- 建築コストの急増と物件価格の上昇
- 資材価格の高止まり: 木材、鉄鋼、セメント、原油などの主要な建築資材は、国際情勢、供給網の混乱、円安などの影響を受け、依然として高水準で推移しています。特に鉄鋼やセメントは、中国やインドの需要増加や脱炭素化に伴う生産調整も影響しています。
- 人件費の上昇: 建設業界では少子高齢化や若手人材の不足が深刻化しており、熟練工の確保が困難です。このため、人件費(人工費)が高騰し、建築コスト全体を押し上げています。2024年問題(建設業における残業規制強化)や2025年問題(高齢化の進展)は、さらなる人手不足と人件費上昇を招く可能性があります。
- 物流コストの増加: 原油価格の高騰やトラックドライバー不足(2024年問題の影響)により、資材の運搬コストも増加しています。
- 物件価格への転嫁: これらのコスト上昇分は、最終的に新築マンションや戸建ての販売価格に転嫁されます。国土交通省の調査によると、2020年以降、マンションの建設費は年平均5〜10%のペースで上昇し、5年間で40%も上昇したとの報告もあります。これにより、住宅購入希望者の予算を圧迫し、買い控えや需要の冷え込みにつながる可能性があります。特に都心部に比べ販売価格を高く設定しにくい郊外エリアでは、事業採算が悪化しやすい状況です。
- 新築供給の減少
- 採算性の悪化: 建築コストの急騰は、デベロッパーや建設会社にとって事業採算を悪化させます。このため、新規プロジェクトの着工を延期したり、中止したりするケースが増加しています。
- 用地取得の難化: 高騰する建築費に加え、土地価格も上昇傾向にあるため、マンション建築に適した用地の取得がさらに困難になっています。
- 市場供給量の低下: 結果として、新築住宅の供給量が減少し、需給バランスが崩れることで、残された物件の価格がさらに高騰する悪循環に陥っています。
- 建設会社の経営圧迫と倒産リスク
- 利益率の低下: 特に中小規模の建設会社は、資材の仕入れ価格交渉力が弱く、高騰分を販売価格に転嫁しきれない場合、利益率が低下し、経営を圧迫します。
- 倒産件数の増加: 帝国データバンクの調査などでも、建設業における物価高・人手不足による倒産件数が増加傾向にあることが示されています。
- リフォーム・リノベーション市場への影響
- 新築だけでなく、既存住宅のリフォームやリノベーションに必要な資材費用も高騰しており、消費者の負担が増加しています。
対策
不動産業界では、これらの高騰影響に対応するため、様々な対策を講じています。
- コスト削減と効率化
- 代替材料の活用と工法の見直し: 高騰している資材の代替品や、より効率的な工法(プレハブ工法など)を積極的に検討・導入することで、資材コストや工期を削減します。
- 設計の最適化(VE提案): 設計段階で、機能や品質を維持しつつコストを削減するバリューエンジニアリング(VE)を導入。例えば、平面計画や構造計画の合理化、設備計画の見直しなどにより、資材使用量や工事費を抑えます。
- 資材調達の工夫:
- 早期発注・価格の固定化: 資材価格の変動リスクを抑えるため、可能な限り早期に発注し、価格を固定する契約を結ぶ。
- 共同購入・バルク購入: 複数のプロジェクトや企業で資材を共同購入したり、大量発注したりすることで、仕入れ価格の交渉力を高めます。
- サプライヤーとの連携強化: サプライヤーとの長期的な関係構築により、安定的な供給と価格の安定化を目指します。
- 国内調達の検討: 輸入資材に過度に依存せず、国内で調達可能な資材の活用を検討します。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進:
- BIM(Building Information Modeling)の活用: 3Dモデルを用いた設計により、資材の無駄をなくし、施工効率を高めます。
- IoTやAIの活用: 現場の生産性向上や資材管理の効率化に貢献します。
- 積算・見積ソフトの導入: 材料費の見積もり精度を高め、コスト管理を強化します。
- 業務プロセスの効率化: ITツールの活用や業務のムダ削減により、人件費を含む固定費の見直しと削減を図ります。
- 価格戦略と販売促進
- 価格転嫁と付加価値向上: コスト増を販売価格に転嫁せざるを得ない場合でも、スマートホーム機能の導入、省エネルギー性能の向上、デザイン性の追求など、物件の付加価値を高めることで、価格に対する納得感を高めます。
- 中古物件の活用とリノベーション: 新築物件の価格高騰を受け、中古物件のリノベーション需要が高まっています。中古物件にスマートホーム技術などを組み合わせることで、高付加価値化を図り、新たな市場を創造する動きもあります。
- 賃貸事業へのシフト: 分譲事業の採算悪化を受けて、賃貸マンションや物流施設など、安定的な収益が見込める事業へのシフトを検討するデベロッパーもいます。
- 政府・金融機関との連携
- 補助金・税制優遇の活用: 省エネ住宅への補助金や、設備投資に対する税制優遇など、政府の支援策を積極的に活用します。
- 金融機関との連携: 住宅ローン金利の動向を注視し、購入希望者への情報提供や、変動金利・固定金利のリスク説明を強化します。
- 人材確保と育成
- 人件費高騰の根本原因である人手不足を解消するため、若手人材の確保・育成、外国人労働者の活用、賃金改善、労働環境の改善などを進める必要があります。
これらの対策は、個々の企業だけでなく、業界全体として取り組むべき課題です。原材料費高騰はしばらく続くとの見方が強く、持続可能な不動産供給体制を構築するために、各社は柔軟な対応と戦略的な意思決定が求められています。
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